東京駅の中にある東京ステーションギャラリーで開催中の
「佐伯祐三-自画像としての風景」を観て来ました。
佐伯祐三は、1898(明治31)年に、大阪に生まれた洋画家。

30歳という若さで、パリで亡くなった画家を見出したのは、
大阪の実業家で美術コレクターの山本發次郎だったそうです。
山本は、佐伯の絵を集めたのですが、
戦災でそのうち2/3が消失してしまいます。
残されたコレクションが1983年に遺族から大阪市へ寄贈され、
現在は、2022年2月にオープンした中之島美術館が収蔵しています。
山本が集めた作品をベースにした、
中之島美術館の佐伯祐三コレクションは、
日本最大級の質と量を誇るそうです。
東京ステーションギャラリーの冨田章館長は、冗談めかして
中之島美術館ができるまで、佐伯祐三の回顧展を、
どの美術館も遠慮していた、と仰っていました。
山本發次郎のコレクションは、
美術界で大切に思われているんですね。
そうした経緯もあって、15年ぶりの大回顧展となる今回、
東京ステーションギャラリーで観られるのは、
中之島美術館のコレクションを中心とした、佐伯の画業です。
展覧会のタイトルにもなっている自画像から始まり、
自らを映すように、風景を様々なタッチで描いていきます。
私が気に入ったのは、東京・下落合を描いた作品たち。

大阪生まれの佐伯は、大学時代に下落合に住んでいたそうで、
戦前の東京の、坂の多い町が活写されています。
近くに住んでいた頃、よく散歩していたところなので、
親近感が湧き、懐かしい気持ちになりました。
そして、2度の留学生活を送ったパリで描かれた絵画も、見応えがありました。
同じモチーフを何度も描いていて、
時期ごとに、関心やタッチが変わる様がよく分かります。
体調を崩した佐伯が最後に描いたのは、人物と扉。
展示を通して佐伯の画業を追体験してきたので、
「描き切った」と伝えたとされる作品は、胸に迫るものがありました。
短い佐伯の画業が一堂に会した「佐伯祐三-自画像としての風景」は、
東京ステーションギャラリーで、4月2日までです。
ちなみに、音声ガイドは、
「うどうのらじお」でもお馴染みの、有働由美子さんが担当されています!