2023年6月

  • 2023年06月25日

    今だからこそ観られる風景画

    泉屋博古館東京で開催中の「特別展 木島櫻谷―山水夢中」。

    近代の京都画壇を代表する存在として再評価されている日本画家、
    木島櫻谷(このしまおうこく)の山水画がたっぷり味わえる展覧会です。


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    木島櫻谷は、戦後、忘れられた時期もあったものの、再評価が進んでいます。
    これまでは、動物画が注目されてきたそうですが、
    山水画も独特の魅力に溢れています。

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    木島櫻谷は、20代半ばから30代半ばにかけて、毎年国内各地へ写生旅行に出かけていて、
    そこで、観たものを、写生帖に描いていました。

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    感動すると、漢詩を詠むなど、メモや感想、驚いたことも書きつけられた旅日記です。

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    木島櫻谷の死後、長持に保管されてきた約600冊の写生帖の中から、
    40冊を修理し、データベース化する事業が行われ、今回の特別展にも繋がったそうです。

    PSX_20230625_132407.jpg 櫻谷の写生帖は、自ら紙を継ぎ足して作られていることなどもあって劣化が進み、
    ページがくっついてしまい、開くことすらできないものもあった中、
    根気強く修復作業が行われました。

    その成果は、https://okoku-shaseichou.com/sketchbook/ で、観ることができます。


    こうした写生を基に作り上げられた、木島櫻谷の山水画。

    PSX_20230624_175923.jpg 屏風や壁画など、大きなものも多く、見応えがあります。

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    私のお気に入りは、「飛瀑」という滝を描いた一枚。

    PSX_20230624_180143.jpg 解説を読んで気付いたのですが、滝自体を描くことなく、
    周囲を描くことで、白い水しぶきの飛ぶ滝の様子を表現しています。

    あまりに自然に滝が描かれていますが、
    よく見ると、滝自体は描かれていない、不思議さの虜になりました。


    また、木島櫻谷が幼馴染に宛てた絵葉書もありました。
    受け取った幼馴染が、大事にアルバムに仕立てていたそうです。

    PSX_20230625_132506.jpg 1枚ずつ丁寧に扱われていて、とても大切にしていたことが分かり、
    温かい気持ちになりました。


    ちなみに、図録にも、写生帖が付録としてついていて、
    木島櫻谷の世界を手に取って感じることができます。


    木島櫻谷の山水画を堪能できる「特別展 木島櫻谷―山水夢中」は、
    泉屋博古館東京で、7月23日(日)までです。


    ※写真は、主催者の許可を得て掲載しています。

  • 2023年06月19日

    恐竜図鑑で太古の世界へタイムスリップ

    上野の森美術館で開催中の
    特別展「恐竜図鑑―失われた世界の想像/創造」を観てきました!

    PSX_20230603_165249.jpg 我が家の3歳の息子は恐竜が大好き。
    私も、小さい頃に恐竜が好きだったことを思い出して、再び恐竜熱が高まっているので、
    とても楽しみにしていました。

    PSX_20230603_165502.jpg 特大の図鑑が並ぶようにデザインされた入口から、ワクワクした気分が高まります。

    PSX_20230603_170406.jpg 恐竜の展示というと、化石を思い浮かべる方も多いと思います。

    この展覧会を企画した神戸芸術工科大学教授の岡本弘毅先生は、
    この特別展「恐竜図鑑」では、生体復元図、
    発掘された恐竜の化石を、想像で補いながら絵にしたものに敢えて着目したと言います。

    PSX_20230603_170002.jpg レオン・ベッケル
    「1882年、ナッサウ宮殿の聖ゲオルギウス礼拝堂で行われた
     ベルニサール最初のイグアノドンの復元」
    1884年、ベルギー王⽴⾃然史博物館、ブリュッセル


    先生によると、恐竜が発見されたのは、今から約200年前。

    恐竜が発掘されたのとほぼ同じ時期に始まった古生物復元画(パレオアート)の歴史を辿ることで、
    恐竜のイメージがどう変わってきたのかが分かります。


    史上初めて描かれた古生物の絵と言われているのが、
    「太古のドーセット」という、1830年の作品です。

    PSX_20230603_172333.jpg ジョージ・シャーフ(ヘンリー・デ・ラ・ビーチによる) 「ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)」

    魚竜によって、首長竜が嚙みつかれた瞬間を描いています。


    PSX_20230603_165610.jpg 恐竜の姿が変わっていったことが象徴的に分かるのが、イグアノドン。

    PSX_20230603_172445.jpg ジョン・マーティン「イグアノドンの国」
    1837年、ニュージーランド国⽴博物館テ・パパ・トンガレワ、ウェリントン


    初期のイグアノドンは、地べたを這い回る姿で描かれ、鼻の上にツノがあります。

    DSC_4049~2.JPG (向かって左側がイグアノドンの絵です。)

    その後、ツノだと思われていた骨が、指のスパイクだとされるなど、形が変わって今の姿に至ります。



    特別展「恐竜図鑑」では、展覧会オリジナルキャラクターの
    「イグアノドン3きょうだい」になって、
    時代によって姿が大きく変わってきたことなどを説明してくれます。

    お子さんにも、親しみやすく分かりやすい展覧会ですので、
    夏休みの自由研究にもおすすめです!

    さらに、南沙良さんが担当する音声ガイドも、
    スマートフォンがあれば無料で聴くことができ、
    理解をより深めることができます。


    現代のパレオアートは、研究との密接な連携で、緻密に描かれています。

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    PSX_20230603_174143.jpg 小田隆「篠山層群産動植物の生態環境復元画」


    最新の研究成果が、分かりやすく、格好良く楽しめるパレオアート。
    その時代の研究を映す鏡でもあります。

    パレオアートの歴史を余すことなく知ることができる特別展「恐竜図鑑」は、
    上野の森美術館で、7月22日までです。

プロフィール

箱崎みどり

東京都生まれ。2011年ニッポン放送入社。 東京大学大学院修士課程修了(修士論文のテーマは「日中戦争期における「三国志」ブーム」) 趣味は、読書、プロ野球観戦、お笑いを見ること。特技は遠泳。


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