泉屋博古館東京で開催中の「特別展 木島櫻谷―山水夢中」。
近代の京都画壇を代表する存在として再評価されている日本画家、
木島櫻谷(このしまおうこく)の山水画がたっぷり味わえる展覧会です。
木島櫻谷は、戦後、忘れられた時期もあったものの、再評価が進んでいます。
これまでは、動物画が注目されてきたそうですが、
山水画も独特の魅力に溢れています。
木島櫻谷は、20代半ばから30代半ばにかけて、毎年国内各地へ写生旅行に出かけていて、
そこで、観たものを、写生帖に描いていました。
感動すると、漢詩を詠むなど、メモや感想、驚いたことも書きつけられた旅日記です。
木島櫻谷の死後、長持に保管されてきた約600冊の写生帖の中から、
40冊を修理し、データベース化する事業が行われ、今回の特別展にも繋がったそうです。
櫻谷の写生帖は、自ら紙を継ぎ足して作られていることなどもあって劣化が進み、
ページがくっついてしまい、開くことすらできないものもあった中、
根気強く修復作業が行われました。
その成果は、
https://okoku-shaseichou.com/sketchbook/ で、観ることができます。
こうした写生を基に作り上げられた、木島櫻谷の山水画。
屏風や壁画など、大きなものも多く、見応えがあります。
私のお気に入りは、「飛瀑」という滝を描いた一枚。
解説を読んで気付いたのですが、滝自体を描くことなく、
周囲を描くことで、白い水しぶきの飛ぶ滝の様子を表現しています。
あまりに自然に滝が描かれていますが、
よく見ると、滝自体は描かれていない、不思議さの虜になりました。
また、木島櫻谷が幼馴染に宛てた絵葉書もありました。
受け取った幼馴染が、大事にアルバムに仕立てていたそうです。
1枚ずつ丁寧に扱われていて、とても大切にしていたことが分かり、
温かい気持ちになりました。
ちなみに、図録にも、写生帖が付録としてついていて、
木島櫻谷の世界を手に取って感じることができます。
木島櫻谷の山水画を堪能できる「特別展 木島櫻谷―山水夢中」は、
泉屋博古館東京で、7月23日(日)までです。
※写真は、主催者の許可を得て掲載しています。