パナソニック汐留美術館で、12月18日まで開催されている
「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」に行ってきました!
可愛らしい犬のチラシに惹かれて、神坂雪佳のことを知らずに観に行ったのですが、
"近代の琳派"と称される神坂雪佳は、
幕末に生まれ、明治から昭和に活躍した京都の図案家・画家だそうです。
2001年には、雪佳の作品が、日本人作家で初めて、
エルメスの機関紙「エルメスの世界」の表紙を飾るなど、
今なお国を超えて人々の心を捉えるデザイン・作品を多く残しています。
まず展示室に入ると、雪佳の写真が迎えてくれるのですが、
この展覧会は江戸時代のはじめからスタートします。
雪佳の作品の前に、「あこがれの琳派」と題し、
琳派の流れを各絵師の作品で丁寧に辿ります。
本阿弥光悦、俵屋宗達の作品から、
尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一まで。
中でも、私が気になったのは、
雪佳も「枝豆露草図屏風」という作品を持っていた中村芳中。
パキっとした色鮮やかな橙のくちばしを持つ小鳥が目を引く「白梅小禽図屏風」や、
鹿がぽかんとしているように見える「月に萩鹿図」など、
柔らかいのに、一度見たら忘れられない作風が印象的でした。
また、渡辺始興の「白象図屏風」は、
1729年に実際に京都に来た象を観て描かれた可能性があるとのこと!
リアルなひづめに注目です。
琳派の流れを概観した後は、いよいよ雪佳の作品です!
まず、「美しい図案集 ―図案家・雪佳の著作」と題して、
雪佳の手による図案集が展示されているのですが、
どれもゆっくりめくってみたい魅力にあふれています。
特に、蝶のデザインを集めた『蝶千種』は、再版する度によく売れるんだそうです。
また、『染色図案 海路』は、波のデザインなどが載っているのですが、
これは、1901年7月から視察などのために渡欧したときの、船上で考えられたものだとか。
観たものを独自のデザインに落とし込む雪佳のセンスに惚れ惚れします。
続いては、「生活を彩る ―雪佳デザインの広がり」。
雪佳がデザインした工芸品が並び、図案と対照できるものもたくさんあります。
私が角度を変えてずっと眺めていたのが、
「菊花透し彫鉢」(神坂雪佳図案/河村蜻山作)です。
菊の花弁の輪郭を残した透かし彫りがあしらわれた鉢で、
大胆かつ美しく、目が離せなくなりました。
庵の中で頬杖をついた脱力系の人物がこちらを見つめる
「雪庵菓子皿」(神坂雪佳図案/河村蜻山作)、
小さな小さな白鷺が愛らしい「住之江蒔絵色紙箱」(神坂雪佳図案/木村秀雄作)、
文机と硯箱のセットでひとつの世界を作り出す「若松鶴図文机/硯箱」など、
ユーモラスだったり、愛らしかったり、美しかったりと、色々なタイプの作品があり、
雪佳の才能の豊かな広がりを垣間見ることができました。
展覧会の最後を飾るのは、「琳派を描く ―雪佳の絵画作品」
琳派では、「燕子花図」と言えば、尾形光琳のものが有名ですが、
雪佳の「杜若図屏風」には、白いカキツバタが入っています。
昭和天皇即位の大礼の際に制作されたという「白鳳図」は、神々しく、
琳派の伝統を踏まえ、独自の表現を極めた雪佳の画業をじっくり味わうことができます。
撮影できるものが限られていて、
ご紹介した作品のうち、多くの写真は載せられなかったので、
ぜひ、実際にご覧になってみてください。
「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」は、
パナソニック汐留美術館で、12月18日まで開催されています。
休館日は水曜日で、土日は日時指定予約制です。
ちなみに、今回の展示の後、パナソニック汐留美術館は、改修工事のために休館。
リニューアルオープンするのは、来年4月8日だそうです。