昨年末に開催を知ってから心待ちにしていた展覧会を観て来ました!
原宿にある太田記念美術館で1月29日まで開催中の「浮世絵と中国」です。

太田記念美術館は、浮世絵専門の美術館。
五代太田清蔵という方が蒐集した約12,000点という膨大な浮世絵を所蔵しています。
2023年初めの企画展は、「浮世絵と中国」!(待ってました!!)

江戸文化の象徴のような浮世絵は、
画題として、そして、最新技法も、中国文化から取り入れていたんだそうです。

展覧会の始まりは、鳥居清胤「遊女と鍾馗相合傘」。
五月人形にもなる鍾馗様と、遊女の取り合わせ。
外国の文化も取り込んで、自在に遊んでいた江戸の人々の象徴のような作品です。
鳥居清胤「遊女と鍾馗相合傘」に続く展示の2枚目が、
鳥山石燕の「関羽図」です。

左の人物、三国時代の武将・関羽の後ろに控えるのは、関羽の部下の周倉。
小説『三国志演義』に登場する、実在しない人物です。
それでも、関羽を祀る世界中の関帝廟で、周倉が近侍しているように、
関羽を造形する上で、欠かせないのが周倉の存在。
この「関羽図」の周倉の、関羽の周囲を警戒・威圧するような表情が堪りません。
そのほか、『水滸伝』や『西遊記』、唐詩、王昭君、虞美人などなど、
様々な物語、歴史上の人物やエピソードが、浮世絵に仕立てられています。
歌川国貞「漢楚軍談 楚項羽妻慮氏」
たくさんの展示作品の中でも、
私が好きな「三国志」関連から、二つご紹介しますね。
まずは、見立て。
以前、「江戸の見立て文化と政治性――アイヌ、三国志、プロパガンダ」というテーマで、
近現代史研究家の辻田真佐憲さん、
江戸東京博物館学芸員の春木晶子さんとお話しさせていただいたことがあります。
(レポート記事は
こちらです。)
江戸文化と見立ては、切っても切れない深い関係。
「中国と浮世絵」においても、一章を使って、10を超える作品が展示されています。
『三国志演義』で、劉備が孔明を三度訪問し、出仕を頼む「三顧の礼」。
「三顧の礼」そのものも、浮世絵の画題になっていますが、
三顧の礼をモチーフに、劉備たちを女性に見立てた浮世絵が3点もありました!
蹄斎北馬「やつし草盧三顧」
勝川春扇「やつし玄徳雪中訪孔明」
そのほか、三国志関連だと、「竹林の七賢」のメンバーが女性になったものも。

見立ての自由さ、江戸の人々の想像力を改めて目の当たりにしました。
もう一つ、ご紹介したいのが、月岡芳年の「月百姿」。
明治時代に描かれた、月をモチーフにした100枚の浮世絵です。
100枚のうち、11枚が中国に題を採ったものだそうです。
私は、「月百姿 南屏山昇月 曹操」を楽しみにしていたのですが、

幻想的な嫦娥、躍動感ある兎と孫悟空、
静謐な印象を受ける、月の木を切った呉剛など、
ほかの作品も魅力的で、うっとり。

帰ってからすぐに「月百姿」の画集を取り寄せ、少しづつ眺めています。
春木晶子さんの『江戸パンク!』にも出てきた、
歌川国芳「通俗水滸伝豪傑百八人之一人 花和尚魯知深初名魯達」など、
力強い作品もたくさん見られます。
普段、あまり目にする機会がない、中国を題にとった浮世絵が一堂に会する「浮世絵と中国」は、
原宿の太田記念美術館で、1月29日(日)までです。
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
江戸文化の中の「三国志」に興味が出てきたら、
遊女になった張飛のお話なども紹介している、拙著
『愛と欲望の三国志』も、ぜひご笑覧ください!