2018年07月09日

将来世代に"ツケ"を残すな!

 西日本での豪雨は週が明けて徐々に被害の全容が明らかになってきました。このブログを書いている段階(9日月曜午前)で、死者89人、安否不明58人となっています。
 今朝のOK!Cozy Up!では倉敷市の防災危機管理室の方を繋ぎましたが、まだ情報の把握に追われているという印象。これは行政の怠慢などでは決してなく、情報インフラがこれだけやられてしまうと行政としても情報収集のしようがなく、対策といっても打つ手が限られてしまうということを浮き彫りにしていました。それほど広範にわたって長時間激しい雨が降り、各地に爪痕を残したわけですが、中には対策が間に合っていれば被害を抑えられた可能性も指摘されています。

<住宅地が大規模に冠水した岡山県倉敷市の小田川の決壊は、高梁川との合流地点付近が湾曲して水が流れにくくなっているため、水がたまって、上流側の水位が上昇したことが原因とみられると専門家は指摘している。水害の恐れが高く、河川改修の工事が計画されていた。>

 この小田川と高梁川の合流地点こそが、今回堤防が決壊し大きな被害が出た倉敷市真備町です。倉敷市によれば、真備町一帯だけで1200ヘクタールが浸水、およそ3500人が避難を余儀なくされた地域ですが、ここにはかねてから河川改修工事が検討され、かつ地元から国へ何度も要請がありました。


 この資料は、2014年3月12日に行われた、国土交通省社会資本整備審議会河川分科会の事業評価小委員会に提出されたもの。資料自体がすでに4年前のものですが、下段の新規事業採択時評価の中に地域の協力体制という項目があり、地元がここ10年に渡って陳情し続けてきたことがわかります。
 倉敷市が国交省(大臣等)へ要望を最初に出したのは平成21年11月。そこからこの平成26年度(2014年)に至るまで毎年、市、県、地元の改修促進協議会や期成会が相次いで国へ働きかけを行い続けてきました。そしてようやく平成26年度に予算が付いたわけですが、これも様々なプランの中から予算の面で削りに削って河川付け替え工事に至ったようです。
 今度は上段の計画段階評価の中をご覧いただきたいのですが、複数案の提示、比較、評価という欄に堤防かさ上げから流域対策まで実に12個のメニューを提示していますが、これに対する評価は何よりもコスト。各メニューに対して実現可能性という欄にコメントが添えられていますが、"コストが高い"と評されたものはすべて選定から漏れています。
 結果採択された河川改修工事は、平成26年度から始まって平成40年度までの長期間を要する河川の付け替え工事でした。

 今回、大きな被害が出てしまったがためにこうして議論の俎上に持ってくるというのは卑怯ではないか!という批判は仰る通りだと思います。ただ、今後の復興に向けた財源の議論でもおそらく増税を選択肢に据える向きも出てくるでしょうから先に申し上げなければなりません。あくまで、この小田川の事例は一例にすぎず、日本全国に予算付けを待つ喫緊の河川改修が目白押しなのです。さらに、今回の水害の復興需要が上乗せされれば、既存の枠内に入りきらなくなります。その時に、既存の枠の中で予算の奪い合い、事業の選別が行われれば、採択に漏れた土地でまた水害が起こらないとも限りません。
 こうした河川改修工事は典型的な公共投資、インフラ整備です。ということで当然、ここには建設国債の活用が可能です。政府が一旦負債として国債を起債し資金を集め、それをインフラ整備に投資をするわけですが、そのインフラは世代を超えて使われ、二度とこうした被害が出ないようにすることで広く、そして長く公共の便益を生み出すことが出来ます。償還期間は60年ですが、しっかりとしたインフラならば60年を超えて利用することが可能ですから、投資効率を考えても十分ペイが可能でしょう。

 国債の増発というと、とかく「将来世代にツケを残すな!」「国の借金が増えて破綻する~!」という批判が飛んできますが、とんでもない。「将来にツケを残すな!」と予算を渋ることで、将来の世代に再び洪水の被害をもたらすかもしれません。いい加減、公共事業悪玉論を止めませんか。

 かつて先人たちは言いました。
「国を治めるには水を治めることに在り」
気象の環境が激変している今、日本人が噛みしめる必要がある言葉だと思います。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
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