寝台特急トワイライトエクスプレスが、営業運転終了を前にたびたび雪に足止めされています。今月初めに続いて、先日の日曜も青森で運転を見合わせました。
<大雪のため青森市の青森駅で足止めされていた札幌発大阪行きの寝台特急トワイライトエクスプレスが15日午後2時25分、25時間32分遅れで大阪駅に着いた。乗客は各地の名物の駅弁を配られたり、じゃんけん大会が開かれたりする予定外のおもてなしを受けながら計48時間20分の長旅を過ごしたという。>
来月14日のダイヤ改正を前に、3月12日をもって運転を終了するトワイライトエクスプレス。同じタイミングで運転を終了する寝台特急北斗星もそうですが、北海道新幹線の新青森~新函館延伸開業によって青函トンネルが使えなくなることが廃止の理由です。
ザ・ボイスではこの手のニュースがある度に何だかんだと取り上げているんですが、先日はこんな趣旨のメールを頂戴しました。
<青函トンネルには貨物列車用に在来線の幅(1067mm)のレールが新幹線レールの内側に敷かれていて、設備上は通れるはず。それなのになぜ廃止になるのか?特にトワイライトは客も多いはずなので、ぜひ存続させてほしい>
この方のおっしゃる通り、設備上は通れるはずなんですね。ではなぜダメなのか?このブログでも新幹線と在来線の速度の違いを基に考察してみたことがありました。
その時の結論は、
・どう考えても、トワイライトや北斗星が通る時間帯には新幹線が営業中で、後ろを走る新幹線は寝台特急に追いついてしまう。
・寝台特急がネックになって高速運転ができなくなるのは本末転倒。だから廃止もやむを得ない。
・可能性としては、寝台特急の始発・終着駅での出発・到着時刻をズラし、青函トンネル通過を新幹線の営業運転が終わった深夜・早朝に設定すれば可能性はあるのではないか?
ということでした。
ところが、先日鉄道関係者と話をしていると、この可能性も打ち砕く新たな壁が分かったのです。それは、電圧が関係していました。その方曰く、
「現在、在来線列車が通過している青函トンネルは、アタマの上の架線に交流20000ボルトが流れています。これが新幹線仕様になると、当然現行の東北新幹線に合わせて交流25000ボルトに昇圧されるんですね。そうなると、今使っている機関車は使用できないので、仮に寝台特急を通そうとすると特別仕様の機関車を新造しなきゃならないので、コスト的に難しいんですよ」
なるほどと思いながらも、私はさらに食い下がりました。
「でも、貨物列車はそこを通るんでしょ?そのために、やっぱり特別仕様の機関車を製作しなきゃいけないんじゃないですか?」
確かに、貨物列車用の特別仕様の機関車は製作され、すでに走行試験も行っています。
この私の質問に、件の関係者は、
「そうなんですけどね。これ、貨物列車用に特別に作るということで国から補助金が出ているんですよ。用途は貨物列車に限られているんですね。もし、旅客列車に使ってしまうと、税金を入れた理由とは異なるところで不当に利益を得ることになっちゃうから、できないんですよねぇ」
と、静かに首を振りました。
ん~、私からすれば何とも理不尽な理由なんですが、これ、行政の硬直性を表していませんか?インフラとしては完全に整っているのに、税金の縛りがあるので使えない...。何とももったいない話ではありませんか!
訪日外客数2000万をめざそうという国の目標がある中で、寝台を含め夜行列車がほとんどなくなってしまうのは非常にもったいないと思うんですね。日本と並ぶ鉄道王国のヨーロッパでは、夜行列車も多彩に走っています。たとえば、シティナイトライン(CNL)という列車は、フランス、スイス、ベルギー、オランダ、ドイツ、デンマークの主要都市を結ぶ形で様々なルートが設定されています。これが、旅行者用パス(ユーレイルパス)を持っている旅行者には非常に助かるんです。一泊分浮く上に時間が有効に使えるわけですからね。
また、「日本のオリエンタルエクスプレス」とも謳われたトワイライトや北斗星は、その豪華さからクルーズ客船で来日する旅行客との親和性も大いにあります。実際、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星」など、そうしたニーズをにらんだプロモーションも行っているようです。ななつ星は臨時列車扱いですが、このトワイライトや北斗星は毎日運航している営業運転列車というのが強み。旅行企画が立てやすいメリットがあります。最近は海外のクルーズ船の来航も増えている日本。客を呼び込む目玉となりそうな可能性を、行政の硬直性で捨ててしまうのはいかにももったいないと思うのは私だけでしょうか?