衆議院の解散後はじめての週末を経て、各社の世論調査が紙面を飾っています。右も左も、いわゆる『解散の大義』についての部分を見出しにとっています。
<首相が衆院の解散を決断したことについては「適切だと思わない」が72・2%に達し、「適切だと思う」の22・8%を大幅に上回った。首相が解散の理由に関し、消費税の10%への引き上げ先送りを挙げ、「重い決断をする以上に速やかに国民に信を問うべき」としたことについては、「納得できない」が71・7%を占めた。>
今回の解散は、前々から「ここで解散だ!」という観測記事が出続けました。そしてその解散について、「今回の解散は大義がない。納得できない。不当な解散だ」という論調で紙面が埋め尽くされた上での世論調査という流れなわけです。ここ2週間の紙面構成の成果がこうして数字として表れたまでで、大きく報じるようなものではありません。
さらに極め付けが今日の朝日新聞の2面で、
<朝日新聞社の衆院選連続世論調査(電話)で、衆院選への関心を聞くと、「関心がある」は「大いに」21%と「ある程度」44%を合わせて計65%だった。「大いに関心がある」は過去3回の衆院選前の調査と比較してもかなり低い水準だ。>
「大いに関心がある」人が21%と低いので、きっと投票率がかなり低迷するだろうという記事。「大義がない」し、国民の「関心がない」選挙だから、これは不当な選挙であると主張しているわけです。
しかし、国民が主権を行使する選挙について、公示もされる前から余計なお世話だというものです。「争点もない選挙」、「不当な解散」と言い募って有権者の意識を冷やし、選挙となって投票率が低迷すればしたで批判する。何と言うマッチポンプでしょうか。それより、「これも争点」「あれも争点」と論点を提示して、議論を巻き起こすのがメディアの役目ではないでしょうか?むしろ、政権に対して批判的なメディアの方が、議論が足りていない課題をよくよくご存知だと思うのですが。たとえば、今年の7月にはこんな指摘も。
<いずれの選挙でも、集団的自衛権は公約の中心にはなかった。参院選ではむしろ憲法改正を説き何より経済政策への支持で今日の政権安定を得た。
そうして獲得した権力をまるで白紙委任されたように使い妥協しない。歴代内閣が禁じたことを「できるようにした」のに「憲法解釈の基本は変えていない」と言う。その矛盾に、首相は向き合おうともしない。>
まず指摘したいのは閣議決定がされても実際に関連法が改正されない限り動き出しません。その安保関連法の改正は来年の通常国会で行われる予定です。ということは、今がまさに議論をするタイミングなのです。というか、その議論をする国会議員を選ぶ選挙なんですから、むしろ批判する方々こそこの機会をフルに使って国民的議論を盛り上げるべきでしょう。
それを、このまま「大義なき選挙」と批判し、投票率を下げてしまっては、それこそ「白紙委任」ということになってしまいます。この選挙に大義があったのか、総理の解散の判断が正当だったのか不当だったのかは後世の歴史が審判を下すものですから、そろそろ前向きに論点を提示すればいいのではないかと思うのですが...。