10月半ばに吹き始めた解散風がどんどん強くなってきました。今日の夕刊一面は5紙中3紙が一面トップ「解散」で打ちました。
同じ解散を扱った一面の見出しですが、もっとも真に迫った見出しはどこだったのか?政界関係者に聞くと、公明を前面に出した読売新聞を挙げました。
「いくら自民党サイドが解散をするとしても、公明党の選挙協力がなければ大半の議員が当選できない。これは沖縄の県知事選を見れば明らか。その公明が衆院選の準備を始めたとしたら、逆説的に年内解散が不可避であることの証拠になる。その意味で、同じ解散観測の記事でも読売の見出しが最も説得力のある見出しということになるわけだ」
公明党の組織が動き出した以上、年内解散はかなり現実味を帯びてきたようです。
さて、そうなると受けて立つ野党各党の体制はどうか。民主党執行部は相当に強気な姿勢を保っています。
<ここ数日、政府・与党の幹部から解散についていろいろな発言があります。私たちの基本的な態度は「安倍総理、解散をおやりになるのならどうぞやってください。私たちは正面から受けて立ちます」ということであります。>
今日の衆院本会議前の代議士会でも「解散をおやりになるならどうぞやってください」と繰り返し、臨戦モードにいるようです。民主党の国対経験者の中には、現有56議席の民主党の勢力について、
「3ケタとまでは行かないが、今選挙をやったら85ぐらいは取れるんじゃないか」
という算盤をはじいているようです。その根拠となるのが、前回選挙で大きく議席を減らした大阪府。都市部に強いと言われる民主党が前回選挙で最も大敗したのが、当時の維新ブームにのって1年生議員が大量当選した大阪府の各選挙区でした。何しろ、大阪では当時安倍総裁が就任直後でブームの絶頂だった自民党の各議員でも苦戦した選挙区。ところがあれから2年がたって大阪都構想もとん挫しつつあり、分裂までしてしまった維新に往時の勢いはありません。そこでひょっとしたら、民主は少し議席を伸ばすかもしれませんが、与党の優位は動きません。
それどころか、維新の党は全く体制が整っていないようです。今日の小沢鋭仁維新の党国会議員団幹事長の会見ではそれが浮き彫りになりました。
<(記者)野党各党との候補者調整は?
(小沢)すでにいろいろな形で調整してきたが、改めてシステマティックに行うというのを決めていかなくてはいけない。その機会を一両日中に作らなければいけない。
(記者)一両日中に機会を作りたいというのは、一両日中に民主党との調整を行うということなのか?
(小沢)いや、党内で方針を正式に固めるための機会を作りたいということ。幹部間の調整の場を作りたい。>
候補者調整はおろか、党内手続きもこれからということであると、新聞辞令通りなら12月2日の告示までに間に合うかどうか...。かなり厳しい戦いであることは否めません。その上、民主党との共闘には詰めなければならない重大な政策の違いがあります。ある野党幹部は、
「この選挙の争点は消費税なんだろうけど、これは民主党と他の野党で立場が正反対だからね。民主は『消費増税の延期はアベノミクスの失敗の証拠だ!』って選挙戦を戦うんだろうけど、それを言い出されると消費増税凍結法案を出した他の野党各党は組めない。野党共闘は民主党次第なんだけど、望み薄かな。苦戦は間違いないよ」
こうした野党各党の台所事情を見透かしたかのような今回の解散風。消費増税の可否が争点となるのでしょうが、真の狙いは割れ続ける野党にとどめを刺すことにあるのかもしれません。