消費再増税についての議論が徐々に盛り上がってきました。祝日の今日の朝日新聞は普段2つのテーマを掲載する社説を消費再増税でぶち抜いて長々と書いています。もちろん、消費再増税賛成で。書いてあることは従来の主張通り。
足元の景気が良くないことは認めるものの、社会保障費が国の財政を圧迫している。政府がやるべきは、<歳出全体の徹底的な見直しなど、政策を尽くすことこそが役回りのはずだ。>として、出を切り詰め、それでも足りない分は再増税すべきという論を展開しています。そして、最終的には<再増税を見送っては、財政再建への姿勢が疑われかねない。>として、<政治が国民への責任を果たす。国民も負担増を受け入れる。そして、将来へのつけ回しを減らしていく。消費増税はその一歩である。>と、再増税断行すべしという立場を鮮明にしています。
さて、この<再増税を見送っては、財政再建への姿勢が疑われかねない。>という部分。増税を推進する方々がその大きな理由として必ず挙げてきますが、そんな皆さんが意図的なのかスルーしているニュースがあります。
それが、
<菅義偉官房長官は31日の記者会見で、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字幅を2015年度までに10年度比で半減させる政府目標について「何が何でもやらなきゃまずいことではない、ということではないか」と述べた。
安倍晋三首相が30日の衆院予算委員会で「国際公約とは違うわけで、経済だから何が何でも絶対にという約束は果たせない。目標達成に向けてしっかり努力する必要があることに尽きる」と発言した意味について聞かれて答えた。>
政治面にほんのベタ記事扱いで書かれていたものですが、私は新聞をめくっていてドキッとしました。
これ、重要な記事ですよ。
まず、この『財政健全化目標』というのは、記事に書かれている通り、2010年度と比べてプライマリーバランスを2015年度までに半減、2020年度までに黒字化するという目標。財政赤字を問題視する方々(=消費増税を推進する方々)からは、これが達成されないと、今日の朝日の社説が心配するように、<国債や「円」への信用が傷つき、国債相場の急落に伴う「悪い金利上昇」や、不景気の中での「悪い物価上昇」が>起こるとされています。「ああ大変だ!増税してでも財政健全化!」という、増税推進の方々にとっては特に重要な目標なのです。
そんな大切な大切な目標について、総理も(30日の衆院予算委)官房長官も(31日会見)達成にこだわらないと発言したのです。本当に国債の信認が疑われているのであれば、政府のトップがそうした発言をしたら国債の値段が暴落(利率は上昇)するはずなんですが、そんなことは一切起こりませんでした。
10月30日の時点で10年債が利回り0.475%。10月の初めで0.5%を上回っていたものが、むしろ利率が下がっています(価格は上昇)。
これをどう説明するのでしょうか?市場は、財政健全化が消費増税延期で少し遠回りすることを容認しているのではないでしょうか?増税推進の日経がベタ記事にしているというのも、ちょっと後ろめたさがあったからなのでしょうか。
ちなみに、事の発端となった総理の予算委員会での発言は、30日ということで日銀の追加緩和が発表となる以前の出来事です。国債の利率が下がったのは追加緩和が理由だというのは、否定されるべきと私は考えます。