海外から日本を訪問する観光客が増えています。去年は初めて年間1000万人を突破し、その経済効果が話題になりましたが、今年は去年を上回りそうです。
<先月、日本を訪れた外国人旅行者は、円安傾向や航空路線の拡充などを背景に、およそ110万人となり、9月としては最も多くなりました。
(中略)
日本政府観光局は、「先月末にインドネシアやフィリピン、それにベトナムに対して観光ビザの要件が緩和されたこともあり、ことし1年間の外国人旅行者数は1200万人に到達すると見込んでいる」と話しています。>
メディアによっては1300万人という見込みもあり、消費増税以後冷え込み気味の国内消費を訪日観光客に支えてもらいたいという政府の意図も感じられます。これで経済が回るなら素晴らしいこと。ホテルやデパートなどは観光客のニーズをつかもうと躍起になっています。
ただ、日本は外国人にとって本当に旅行しやすいのだろうかと思うとちょっと疑問が残るのです。特に、私の好きな鉄道の分野は、独自の発展を続けている分だけローカルルールが多くて難しいのではないかと思います。
まず、最近は徐々に増えてきましたが、英語での放送は少ない。特に、何かアクシデントがあった時の英語のアナウンスはほぼ皆無。どれだけ列車が遅れているのか、あるいは運休となるのかなどは直接駅員さんに聞きにいかない限り情報が取れないのではないか?と、先日台風が首都圏に接近した時に思ったのです。また、駅のサインボードなども英語が併記されていないものも少なくありません。
そして、極めつけのローカルルールが、『グリーン車』。普通車に対して一段優等な車両がグリーン車なんですが、当然こんな名前の車両は海外にはありません。最も一般的な優等車両の表記は、『一等車(first class)』。実は、日本でもかつては一等車、二等車という表記だったんですが、1969年の運賃改定の時に改められました。一等、二等という表現が差別的であるというのも一つの理由だったのかもしれませんが、海外から来た人はどっちが優等なのかもわかりません。『グリーン』だからエコな車両なのかな?と思うかもしれません。ちなみに、JR各社の英語ページでの表現を見てみると、
<Green Car (first class) >
<Green cars are a rank above reserved seating in ordinary cars.>
(グリーン車は普通車指定席よりも上のランクの席です)
<If the holder travels on a Green Car, the Green Car charge will be assessed in addition to the ordinary express charge.>
(グリーン車に乗ると、グリーン料金を追加で請求されます)
<First-class Car(Green Car)>
各社、グリーン車=一等車(ファーストクラス)という認識で、それに沿った表記となっています。が、さらに外国人旅行客を混乱させるのが、さらに上のクラスの存在。東北新幹線や北陸新幹線などに設定されている『グランクラス』。JR九州のDXグリーン車などが登場すると、一体どう説明してよいのやら。少なくとも、サインボードやマークを見るだけでは全く理解できません。これでは、この車両は乗っていいのか悪いのか判断がつきません。勘違いで乗ってしまったら追加料金を請求されるかもしれないとなると、これは日本語を解する人しか使えないというハードルの高い制度になってしまいます。一等、二等と表記を変えるか、グリーン車のマークの下を「Green Car」から「First Class」に変えるべきです。
鉄道つながりでもう一つ気になることは、駅の設備があまりに貧弱であるということ。海外は日本ほど時刻通りに列車が到着しないので、ギリギリに駅に着く客はほとんどいません。ある程度余裕をもって集まってくるお客さんのために、特に中心都市のターミナル駅では駅構内の設備が充実しています。
自分の国での習慣を旅先でも行うということを考えると、日本の鉄道を利用するときにも早めに駅に来るということは想定しておかなくてはいけません。たしかに、ホームのベンチでぼーっとしている外国人をたまに見かけます。ずーっと、列車を待っているわけなんですね。
最近『駅ナカ』なんて言って駅の構内の飲食店や雑貨屋さんなどが充実してきていますが、利用客に対して供給が少なすぎる。お盆や年末年始などは駅の階段を椅子代わりに時間を潰している人を良く見ますもんね。
ちなみにヨーロッパでは、一等車を利用する客に対して専用のラウンジを用意してもてなしているケースが多々あります。これ、日本ではほとんど見かけませんね。唯一、JR九州が一部の駅で運営しているようですが...。外国人観光客、特に富裕層をターゲットにするのであればこうしたサービスも考慮しなくてはなりません。