今日のザ・ボイス、コメンテーターはジャーナリストで東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋さんでした。オープニングでも大展開しましたが、今日のニュースの中で世間の扱いは小さいけれど実は重要だというのが菅官房長官の午前の会見でした。
この中で、会見の最後に消費増税に関する記者の質問に答えた部分なんですが、その部分はほとんど報じられていません。(前記動画の15分過ぎ)唯一、それを取り上げたのはNHKでした。
<消費税率を来年10月に引き上げるかどうかについて、政府としては、来月発表されることし7月から9月のGDP=国内総生産の速報値などを踏まえて判断する考えに変わりはないという認識を示しました。>
この記事だけを見ると「従来の方針通り」という報道であり、なんらニュース性はありません。「変化」こそがニュースとなるからです。
長谷川さんが言及したのが、今回の官房長官会見での、その「変化」。具体的には、「速報値」という表現です。今まで菅長官は消費増税の可否判断について、7~9月期のGDP「改定値」で判断すると繰り返していたのです。
<来年10月に予定する消費税率10%への引き上げについて、今年7~9月期の国内総生産(GDP)改定値を踏まえ最終判断することは「常識だ」と述べた。>
今までGDP改定値での判断と強調してきました。GDP改定値の発表は12月8日。11月30日に会期末を迎える今臨時国会が閉幕した後となります。ちなみに、GDP速報値は11月17日に発表となり、こちらは国会会期中です。
今までGDP改定値を判断材料とするのは「増税の是非が国会論争になるのを避けるため」(政界関係者)と言われてきました。
それが、今回国会会期中に発表される「速報値」で判断すると菅長官は明言したわけです。これは大きな方針転換。ざっと、判断を一か月前倒しするということを暗に表明したわけです。
これについて長谷川さんは、
「増税延期のサインだ」
と読みました。安倍政権は2閣僚辞任、最近の指標の景気低迷などで、内閣支持率に悪い影響が出るのは必至です。その上増税という不人気政策を決定すれば、支持率がさらに低下し、悪くすると危険水域に入って行ってもおかしくありません。
そうした政策であればこそ、GDP速報値が出たあと世論の様子を見ながら時間を稼ぎ、改定値が出る12月まで判断を先送りするのが自然な考え方でしょう。それを判断前倒しとなると、世論にとってプラスになるサプライズがなければいけません。すなわち、今の時点でも世論調査で国民の7割が反対している消費増税を延期するという決断です。
しかし、増税延期となると自民党内外の増税賛成派を抑える必要があります。国会会期中ですから、国会審議も消費増税一色になり空転するでしょう。政権が今国会の目玉と位置付けた労働者派遣法や地方創生関連法案、カジノ法案などの成立も見通せなくなります。
それらを打開するためにどうするか。
当然、総理が持つ伝家の宝刀、解散権を行使することも視野に入って来るのです。慣例として、衆議院の解散は国会の会期中という不文律があります。11月17日に判断を前倒しすれば、直後の解散だって可能ということになります。
衆議院議員にとって何より怖いのは解散総選挙。
これが現実味を帯びてくれば、おいそれと総理の判断にたてつくことはできません。その上、増税延期は国民的には人気の政策。なおさら反対しづらくなります。
さて、さらにシミュレーションを進めると、解散はいつになるのか...?ここから、カレンダーが手放せなくなります。
解散は衆議院本会議で行われます。慣例では、衆議院本会議は火曜と金曜。11月17日の直近の衆議院本会議は18(火)、21(金)。翌日解散というのはいささか乱暴ですし、この日は仏滅。政治家の皆さんは、こういった解散などのビッグイベントについてはビックリするほどゲンを担ぎますので、暦を非常に気にするのです。ちなみに、11月21日(金)は先勝。先手を打って勝負をかける安倍官邸にとってはうってつけの暦でしょう。
21(金)解散とすると、投票日は...?
公職選挙法では、解散による衆議院総選挙となると、解散日から40日以内に投票日を設定するという規定があります。11月21日から40日後というと、12月30日(火)。そこまでに日曜日は6日あります。
衆議院選挙は公示から投票日まで12日間取らなくてはいけませんから、最短で11月25日公示、12月7日投票日。ちなみにこの日は先勝。ゲンはいいですが、日程的には少し窮屈です。以下、日曜日は12月14日(友引)、21日(先負)、28日(大安)という暦。21日の先負はゲンが悪いので避けるでしょう。28日は暮れも押し迫っているので、いかに大安であってもここまで引っ張るのは厳しい。
となると、14日か...。いずれにせよ、文字通り忙しい師走となるかもしれません。
いろいろ思索を巡らせる「速報値」発言。秋風とともに解散風も吹きつつあります。