安保法制議論は国会内のみならず、先週末には国会外でも大きく盛り上がったようです。
<国会で審議中の安全保障関連法案に反対する集会が14日、東京・国会周辺であった。呼びかけた市民団体によると、約2万5千人が参加。「戦争法案成立反対」「9条を守れ」「安倍政権の暴走止めよ」などと訴え、国会議事堂の周囲を取り囲んだ。>
今回の安全保障法制に反対の人たちの主張は、記事の中のプラカードの描写にある通り、「戦争させない」「9条壊すな!」。すなわち、「せっかく今まで守ってきた平和憲法を解釈改憲するような法制で、日本は戦争する国になってしまう。」というようなものです。今回の反対デモに加わった有識者もそうした主張をしています。
<評論家の佐高信氏は「今まで私たちが外国へ行く時のパスポートは平和のパスポートだった。それが戦争のパスポートに変わろうとしている」と危機感もあらわ。野党の幹部も登壇し、「廃案を求めていく」と口をそろえた。>
今までの日本は、憲法9条によって守られた平和の国だった。だから世界中から平和の国だと信頼されてきた。今回の安保法制はその信頼を根底から崩す、危険で後戻りできないものなのだ。
仮にそうだとしたら、日本は戦後70年間、独立を回復してからは63年余り、憲法9条によって守られてきたということになります。これだけ暴力が吹き荒れる世界の中でも、様々な勢力から一度も狙われなかったということになります。本当にそうでしょうか?歴史は彼らにとって不都合な真実を突きつけています。
<イラク南部サマワで11日午後7時(日本時間12日午前1時)ごろにあった陸上自衛隊宿営地への攻撃について、防衛庁は12日、ロケット弾1発が宿営地内に着弾していたと発表した。信管はついていたが爆発はしておらず、隊員や施設に被害はなかった。
(中略)
陸自を狙った砲撃は9回目。昨年10月22日の攻撃では、宿営地内で信管が抜かれた107ミリロケット弾を発見。同31日には食料品倉庫を貫通した。>
これは自衛隊がイラク戦争の後、サマワに派遣された当時の出来事です。結局派遣期間を通じて、自衛隊の宿営地やその周辺が何者かに攻撃されたケースが14回あり、23発が着弾、そのうち4回は、宿営地の敷地内に着弾したとされます。日の丸がはためく自衛隊の宿営地に対して、1度ならず14度も攻撃があったのです。当時も今と同じで、憲法9条は一言一句変わらずに存在していました。イラクのテロリストは、憲法9条がある我が国を現に襲っていたのです。この時は運良く、本当に運良くロケット弾の信管が作動しなかったので事なきを得ましたが、爆発していたらどうなっていたか。憲法9条があるから我々は狙われないんだという人は、こうした事実をどう説明するんでしょうか?
そもそも、世界の隅々まで日本国憲法9条が浸透しているなんてことがあるんでしょうか?逆を考えれば、我々は他国の憲法をどこまで知っているのか?私は同盟国アメリカであっても憲法何条に何が書いてあるのか即座に言うことはできません。相手がよほど日本のことが好きならまだしも、普通の人は他国の憲法に関してはその程度の認識ではないでしょうか?
先日沖縄で取材した自衛隊員たちはこう言っていました。
「今更自衛隊員のリスクとか、何言っているんだと。現にイラクにもアフガンにも、そうしたリスクを背負って行ってきたんだ」
さて、安保法制の審議が滞りを見せることで、誰が喜ぶんでしょうか?こんな小さなニュースがありました。
<中国外務省の陸慷報道局長は15日の記者会見で、日本の安全保障関連法案に抗議する集会やデモが東京で行われたことについて、「多くの日本国民と良識ある人々は平和憲法を守りたいと考え、日本政府の軍事安全政策の動向を強く警戒している。(抗議は)理解できる」との考えを示した。
陸局長は「日本の軍国主義は先の侵略戦争で中国とアジアの国々に深刻な災難をもたらした。多くの日本国民もだまされ、戦争の被害者となった」と強調した>
この方、4月に報道局長に就任し、初めて臨んだ記者会見でこうした発言をしたそうです。自国の政府への異議申し立てに対しては徹底的に抑える中国が、日本国内の安保法制反対には理解を示した。これが何を意味するのか?私はむしろ、安保法制の重要性を浮き彫りにしている気がします。